9/01/2010

8月に観た映画(映画館編)。

DVD編に引き続いて、映画館で観た映画を紹介します。

インセプションは面白いので特にオススメです。
しばらくすると公開終了になってしまうと思うので、
お早めにー!









シルビアのいる街で
http://www.eiganokuni.com/sylvia/index2.html


完全にやられた。
主人公は青年ではなく、街だった。
最初の長回しで、監督が展開を期待する観衆を
なだめているということに若干は気付いたが、
まさかここまでとは。。。

「いつもと同じ気分」で観に行くと、完全に肩透かしを食らう。

「自然な街の風景」をこれだけ長い時間、
「人工的に」作り出していたとしたら、
圧巻の技術である。

どこにフォーカスを当てるわけでもないところに、
その難しさがあると思う。
あと、この作品はセリフがかなり少ないのだが、
青年の目の演技がなかなかいい。











フローズン・リバー
http://www.astaire.co.jp/frozenriver/

「貧困」と「少数民族」というテーマの組み合わせ。
あまり見ない組み合わせで、新鮮だった。

「悪役」が存在しないところに、この映画の現実感を
引き立てる大きな要因があるのだろう。
みんな必死で、現実を生き抜こうともがいている。
そこに犯罪が忍び寄ってくる。

「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるが、
まさにこのイメージだろう。

もがくほど、その深みにはまっていく。











ハート・ロッカー(The Hurt Locker)
http://hurtlocker.jp/

映画館で観るとより活きる映画だと思う。

トラウマになるんじゃないかというくらい、「これでもか」
とリアリスティックな恐怖が襲ってくる。
それが終盤に活きている。

暗闇で兵士の荒い息使いだけが聞こえてくるシーン、
そしてスーパーの、棚いっぱいにならんだシリアルを
見て立ちつくすシーンなど、瞬間を捉えるのがうまい。

この映画がアメリカで作られたもの、ということを考えると
その「描き方」にいろいろと思いを巡らせてしまうのだが、
今のところはインパクトが先行して、その点を冷静に
判断しかねる。

その「描き方」にいくらか差し引いて考える点があるとしても、
いい映画だと言えるのではないだろうか。











インセプション
http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/

ざっくり言えば、「記憶」をテーマにした映画。
その点で「シャッター・アイランド」と切り口を
ずらした作品と捉える事ができるだろう。

さらに、シャッター・アイランドに続いてこの作品でも
DiCapprioが出演している。

こういう作品が好きなんだろうか?

twitterで結構評価が高かったので期待して観に
行ったが、期待を裏切らない出来の作品だった。

複雑に入り組んだ作品を、これだけ丁寧に
解きほぐして提示できる
Christopher Nolanは素晴らしい。

この夏観た映画の中で、間違いなくトップ3に入る映画である。











アメリ

http://www.albatros-film.com/movie/amelie/

Jean-Pierre Jeunetの代表作。
全編を通してふわふわした、独特の雰囲気がある映画だった。

さわやかな笑いあり、ブラックな笑いあり。
最後はすっきりまとまっていて、気楽に観れる。

パリ、また行きたいなぁー。










ロング・エンゲージメント

これまたJean-Pierre Jeunetの作品。

『アメリ』と同じ
Audrey Tautouが主演だが、打って変わって、
出征した夫の生存を信じて奮闘する妻の姿を描く。

戦場のシーンは、映画館で見るからこそ臨場感が
リアルに伝わってくる。

最後のシーンの妻の顔が何ともいえない、いい表情。
作品がこのシーンに集約されているように感じられた。

*おまけ*

Audrey Tautouのハリウッド1作目は、『ダ・ヴィンチ・コード』
のヒロイン役だったみたいです。
当時観ていたときは、全然気づきませんでした・・・。

8月に読んだ本。

8月に読んだ本を紹介します。

帰省、合宿など移動時間が多かったので、コマ切れ時間を使って
珍しく小説を何冊か読んだ。


プラチナデータプラチナデータ
東野 圭吾

幻冬舎 2010-07
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プラチナデータ
東野圭吾が好きな母親に勧められて読む。
以前『流星の絆』も読んで面白かったが、これもなかなか面白い。
まだまだ自分の推理が鈍いことに恥ずかしさを感じながらも、
話の筋の面白さ、意外さが楽しかった。
文庫本に比べて少し高いが、買う価値はある。オススメ。

なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか (学研新書)なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか (学研新書)
中井 俊已

学研パブリッシング 2010-07
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・なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか
ジェンダーから日本教育史を見つめ直す、という講義のレポートを
執筆する際に参考に読んだ。
この本では、男女別学によって生まれるメリットを多く紹介し、
男女別学の合理性を主張している。
脳科学によって検証されている男女の生得的な違いや、
PISAの結果から
見えてくる男女の科目ごとの得意・不得意などを根拠としながら論を
すすめている。

ただ、私はこの議論に違和感を感じる。
やはり「学歴」「学校ランク」の影響のほうが強くて、それを補完
するものとして「男女別学」の効果があるように思えるのである。

確かに「男女別学」の学校で偏差値の高い学校はあるが、それは
学校ランクが高いからこそ、それを目当てにして偏差値の高い生徒が
集まってくることで、さらに学校ランクが高まるのであって、
「男女別学」の効果を十分に理解して入学している生徒はほとんど
いないのではないだろうか。

もともと「出来のいい」生徒が入ってくるのであれば、男女別学の
効果で学力が上がったとは言い切れないのである。

この問題にクリアな解答を提示できない点で、全体の議論が説得力に
満ちているとは言い難い。より説得的な議論にするためには、統計的な
(学校ランクを統制したうえで男女別学、男女共学の効果をはかるなど)
実証的な研究が必要になるだろう。

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)
苅谷 剛彦

講談社 2002-05-20
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・知的複眼思考法
教育社会学の大家、苅谷先生の本。
以前からいろんなところでこの本の存在は知っていたが、
やっと読む機会に巡り合えた。
得るところが多かったので、改めてじっくり紹介したいと思う。

東京島 (新潮文庫)東京島 (新潮文庫)
桐野 夏生

新潮社 2010-04-24
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・東京島
映画も公開されたので読んでみようか、と思い購入。
でも個人的にはあまり面白くなかった。
無人島、外界からの侵入者、島との同化、脱出の試みなどなど、
"LOST"のミニチュア版のような印象をぬぐい切れなかった
からだろう。
ちなみに、しばらくするとLOSTファイナルシーズンの
レンタルが始まるみたいですね。
自分はシーズン3で止まっているので、これを機会に(?)、
また見ちゃいそうです。


風の歌を聴け (講談社文庫)風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹

講談社 2004-09-15
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・風の歌を聴け
初めて村上春樹を読んだ。
内容はなんてことはないのだが、物語のところどころで
言葉がきらきらと輝いているような印象を受けた。
こういう作品はあまり読んだことがなかったので新鮮な感じ。

「もし僕たちが年中しゃべり続け、それも真実しかしゃべらないとしたら、
真実の価値など失くなってしまうのかもしれない」


なかなか深くて、ちょっとシニカルで、このフレーズがお気に入りです。

8/31/2010

8月に観た映画(DVD編)。

8月ももう終わりですね!
気温も早く秋らしくなってほしいものです。

そんな暑さに負けて、家で涼みながら観たDVDを紹介します。

トリコロール 青の愛 [DVD]トリコロール 青の愛 [DVD]

紀伊國屋書店 2009-11-28
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・トリコロール 青の愛
その題名の通り、「青」がさまざまな場面でちりばめられている。
各場面が絵のように美しい。
ただ、話が難解なように思えた。まだ僕が青二才だということなのかもしれない。
映画に没入して、味わうような気持ちにはなれなかった。


サイコ (1960) ― コレクターズ・エディション [DVD]サイコ (1960) ― コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2002-08-01
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・サイコ
やっぱりヒッチコックはすごい!
これがいまから50年近く前に作られた映画とは。
脚本がシンプルなのに、きちんと整っていて自然に入り込める。
「無駄がない」「洗練された」脚本だと思う。
特殊な設定のため、その背景説明が最後の数分で行われる。
そのせいで最後にテンポを崩しているなという印象はあるが、
魅力的なストーリー展開にするには致し方ないだろう。

ゴールデンスランバー [DVD]ゴールデンスランバー [DVD]

アミューズソフトエンタテインメント 2010-08-06
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・ゴールデンスランバー
実家に帰った際、母親につられて鑑賞。
全体的にテンポよく話が展開し、入り込める。
要所要所で後の展開を期待させるようなカラクリも
組み込まれていて、ワクワクできる。
でも、最後に裏切られました。。。
個人的には、もっと核心に迫ってほしかった。
それをしないところが、良さなのかもしれませんが。

セブン [DVD]セブン [DVD]

ギャガ・コミュニケーションズ 2007-11-02
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・セブン
「ベンジャミン・バトン」でおなじみのデヴィッド・フィンチャー。
これは面白い!!
ストーリーがしっかりまとまっており、締まったつくりのいい映画。
Morgan FreemanとBrad Pittのコンビがいい!
それに加えて、
Kevin Spaceyがいい演技を見せて雰囲気をもりたてている。
実力のあるメンバーがそろった、見ごたえのあるいい映画でした。

*おまけ*
Kevin Spaceyの出た映画でおすすめなのは、「ユージュアル・サスペクツ」。
ユージュアル・サスペクツ [DVD]ユージュアル・サスペクツ [DVD]
クリストファー・マッカリー

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2006-09-08
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だいぶ前に観た映画なので、「面白かった!」という印象だけが
脳裏にこびりついているというだけです。申し訳ありません。
見て損はないと思います。
できれば事前知識なして観たほうがいいかと。

8/22/2010

念願の!!











http://www.kanazawa21.jp/
金沢21世紀美術館

大学1年生のころから常々行きたいと思っていた、
金沢21世紀美術館にようやく行くことができました!
朝いちで行ったのですが、開場直前には100人以上の人が。
現代アートの美術館がこんなに人で、特に家族連れで
にぎわっている様子を見て、なんだか嬉しくなった。

そういえば、昨日から「あいちトリエンナーレ」が始まった。
その芸術監督の建畠さんが記事で語っていた言葉に、
こんな言葉があった。

(現代アートの鑑賞法を聞かれて) 

「同じ時代に生きている人の表現。正しい理解の

 方式を想定する必要もない。会場に行ってみて

 『おもろいやんけ』でいいんです」


毎日新聞 2010年8月17日
「ひと:建畠晢さん 「あいちトリエンナーレ」芸術監督」
(http://mainichi.jp/select/opinion/hito/news/20100817k0000m070112000c.html?inb=ra)


金沢では、まさにそんな風景があっちでもこっちでも見られた。
金沢の風土もあるのだろうが、子どもだけでなく、特に
お父さんが楽しそうにしている様子が多く見られた。
なんだか心がほっこりした気分になれた。

私は、現代アートは観客との「相互交渉」が醍醐味だと考えている。
この美術館に行って、そのことを再確認することができた。
近くにこんな美術館がある方々、本当にうらやましい!!


私の気になった作品は、

*急がない踊り子
空間の使い方が独特でおもしろい。
何もないところから手が出てきているように見える。

*わたし自身が空になる
絵画を現代アートに取り込むという手法が面白い。
会場で見るとマネキンが本物の人のように見え、
近くにいたおばあさんが、「え、これ本物かと思った!」
と思わずびっくりしていた。


また機会があれば行きたいものだ。

8/20/2010

7月に観た映画。

また日にちが空いてしまいました。
それにしても、東京、ホントに暑いですね・・・。

8月も映画をいくつか見たのですが、それは月末ということに。
ひとまず今回は、7月に観た映画をご紹介します。

レインマン [DVD]レインマン [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2010-06-25
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・レインマン
Dustin Hoffmanの演技が、ストーリーに深みを与えている。
ストーリー自体はそれほど奇想天外なものではないが、
演技によってその主題が深められているように感じた。


卒業(1967) 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]卒業(1967) 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]

UPJ/ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08
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・卒業
主人公を演じているのがこれまた
Dustin Hoffmanだったとは、
全く気付きませんでした!!
この曲のテーマとして、Simon&Garfunkelの
”Mrs.Robinson”が
たびたび用いられています
Simon&Garfunkelはたまに聞くのですが、この
曲を聴くと映画の情景が浮かんできます。
それくらい刷り込まれました(笑)

Dustin Hoffmanが演じる草食男子が卒業するのは、
大学だけではありません。
「卒業」というタイトル、秀逸だと思います。


砂と霧の家 特別版 [DVD]砂と霧の家 特別版 [DVD]
ヴァディム・パールマン

ジェネオン エンタテインメント 2005-03-04
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・砂と霧の家
7月に観た映画の中で、お勧めの1本です!
複雑な事情からアメリカに移住してきた、
イラン人家族にフォーカスを当てた作品。
日本人があまり接することのないイスラム教徒の
価値観が強く伝わってくる映画です。
「なんでこんなことをするのか、わけがわからない」
と言えばそれで終わりですが、そこを我慢して
深く思考を巡らしてみることに、この作品の存在価値が
あるのではないでしょうか。


イン・ディス・ワールド [DVD]イン・ディス・ワールド [DVD]
トニー・グリソーニ

アミューズソフトエンタテインメント 2004-05-21
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・イン・ディス・ワールド
7月のお勧め映画、その2です。
BBCが製作に関わった映画で、ドキュメンタリー的な描き方が
なされた映画です。
とりあえず観てみてください。損はしないと思います。

アイズ ワイド シャット [DVD]アイズ ワイド シャット [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ 2010-04-21
売り上げランキング : 1899

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・アイズ・ワイド・シャット
初めてStanley Kubrickの作品を見ましたが、
どうも僕とはそりが合わなさそうですね(笑)
やりたい放題やって、それをうまく作品に
溶け込ませようとしてるだけじゃん!
と突っ込んでしまいました。
これはこれで、Kubrickにしか作れないという
意味で評価されるべき価値はあるのかもしれませんが・・・。


・ザ・コーヴ
http://thecove-2010.com/

こちらは実際に映画館に行ってきました。
やっぱり胡散臭いですね。
自分達を「オーシャンズ11」になぞらえるあたりが、
中立的に見ようとする心を妨げる。
でもこういう映画が上映されることも、現状に目を向ける
うえでは意味のあることなのかもしれません。

ただ個人的には、映画は思想の「表明」の場であることは許されても、
思想の「押し付け」の道具とはなってほしくないと思います。

7/27/2010

日本の難点

日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)
宮台 真司

幻冬舎 2009-04
売り上げランキング : 3446

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今日は宮台真司『日本の難点』を紹介します。
宮台真司は、私が最近注目している学者です。

論文においてはこれまで、「島宇宙化」など
現状を把握する絶妙な言葉を生みだしており、
literacyの高い人だなと尊敬しています。

この本は、とにかく中身が盛りだくさん。
本を読んでいると時たま見られる、「間延び」
のようなものが全くない。
だから、読み切るのにすごく疲れる本でもある。

取り上げる領域は多岐にわたっているが、
ここで注目したいのはやはり教育について
取り上げた2章である。
2章の終盤で、「早期教育」について触れられて
いる部分がある。

著者は、プラトンのいう「ミメーシス(感情的摸倣)」を周囲に
もたらす人間の存在が重要であるという。
すなわち、「なんだかわからないけど、この人すごい!」
と周囲が思わず感じてしまうような人である。
さらに、「ミメーシス」を引き起こす人間の必要条件として
「ありそうもない衝動」「不思議な動機づけ」に突き動かされて
いることが挙げられるという。
翻って早期教育を行う親は、この「ミメーシス」を引き起こすような
「ありそうもない衝動」「不思議な動機づけ」によって動くのではなく、
「打算的に」動いているパターンが多いのではないかと指摘する。

これは個人的な経験から言うと
、「当たらずといえども遠からず」
というところである。
昔友人の紹介で、「お受験」関係の模試バイトをさせてもらったが、
親の様子はきれいに2タイプに分類できた。

親子面接の後で、(その出来に関わらず)
①両親だけで問題点を洗い出し会話をしており、子どもはそのあとをついてくるという例。
②帰るときにも3人横並びで(手をつないだりして)、なにか楽しげに帰っていく例。

①はまさに筆者のいう「打算的な」パターンだろう。
しかし②の例は早期教育という「ツール」に足を突っ込んではいるものの、
「ミメーシス」を与える存在でありうると思う。

「やはり「主体性」が大事だ」、という誰も救われない文言で締めることに
なってしまいそうである。
まったくもって力不足だ。

所感を述べるだけで何の方向付けも、収束もしていませんが
本を読み直してふと思ったことを、つらつらと書かせてもらいました。

7/26/2010

絶対貧困

絶対貧困絶対貧困
石井光太

光文社 2009-03-24
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今日は「絶対貧困」を紹介します。

この本の特徴は、「当事者視点」で書かれているところ。
筆者が実際にスラムで暮らすなどした経験をもとに書かれて
いるので、ニュートラルな視点から書かれている印象が強い。

スラム暮らしの人々がもつ「連帯感」、婚姻について、など
語られることの少ない着目点もあり、新鮮に感じられた。

一方で、人身売買や売春・物乞いなどについても詳しく書かれて
おり、厳しい現状を理解するきっかけにもなった。


この本を読んでいて強く思い出されたのが、3月に友人と
旅行したタイでの出来事である。

都市部の路上では、マクドナルドの紙コップなどを自分の前に
おいて、じっと座って手を合わせている人たちを多く見受けた。
中には、子どもをかかえたお母さん、さらには5,6歳に見える
子どもがひとり座っていることもあった。

「果たして、この人たちに募金してあげることは本人たちにとって
よいことなのだろうか」
「今募金をしてしまっては、物乞いをずっと続けてしまうのではないか」

こんなことを考え、私は募金をしなかった。
確かにこの考えにも一理ある、と筆者も書いている。

ただし、筆者が強調しているのは
「明日、一週間後、彼ら・彼女らが生きているとは限らない」
ということだ。
貧困は構造的な問題であり、ちょっとした募金で何も状況が
好転しないことは分かっている。
でも、そこにいる人たちは、構造の転換をプライオリティに願っている
のではない。
「自分が少しでも長く生き延びること」を願っているのである。


「少量の金額の授与に、あまりに大きな理想を詰め込まなくてもいいのではないか」
というコメントには、考えさせられました。

以後同じ状況に出会ったとき、果たして自分はどう振る舞えばいいのか。
まだわかりません。