9/21/2010

金城一紀。

またブログの更新が滞ってしまいました。
苦しい言い訳をさせていただくと、決してぐうたらしていて
ネタがなかったわけではありません。

どうも最近、言葉が上滑りしているというか、
本当に書きたい、伝えたいと思って真摯に
書けているのだろうかという疑問をぬぐえなかったので
ちょっと休憩させてもらっていました。

でもここ数日で、やっと真摯に言葉を紡げる自信が出てきたので、
改めて記事を書くことにしました。

・・・と、しょうもない言い訳はここらへんでおいといて。


今日は金城一紀著『対話篇』、『映画篇』を紹介します。


対話篇 (新潮文庫)対話篇 (新潮文庫)
金城 一紀

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映画篇 (集英社文庫)映画篇 (集英社文庫)
金城 一紀

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まずは金城一紀についての簡単な紹介を、wikipediaより。
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金城 一紀(かねしろ かずき、1968年10月29日 - )は、日本の小説家、脚本家である。
大学1年の時、小説家を志すが執筆には早いと判断、大学卒業後の数年間まで膨大な数の作品を見て勉強した。
1998年、『レヴォリューションNO.3』で小説現代新人賞を受賞してデビュー。
2000年、自身の生い立ちが元の半自伝小説『GO』を出版、直木賞を受賞。翌年『GO』は映画化、国内の映画賞を総なめにした。

[著書]
* GO(2000年、講談社・文庫、角川文庫)映画・漫画化
* 対話篇(2003年、講談社・新潮文庫)映画化 (恋愛小説)
* 映画篇(2007年、集英社)2008年度本屋大賞第5位 漫画化

<ゾンビーズ・シリーズ>
* レヴォリューションNO.3(2001年、講談社・角川文庫)漫画化
* フライ,ダディ,フライ(2003年、講談社・角川文庫)映画化・漫画化
* SPEED(2005年、角川書店)漫画化

<シナリオ本>
* SP 警視庁警備部警護課第四係(2008年、扶桑社)
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以上、wikipediaより引用。表記など一部改変。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%9F%8E%E4%B8%80%E7%B4%80)

私自身、金城一紀の作品の中にはかろうじて名前を
知っているものもあったが、実際に読んだことはなかった。
友人にすすめられて、初めて読んだ著書がこの2冊である。


『対話篇』は3つの中編小説が収録されている。
ただ、3つそれぞれが場所・象徴的なモノなどで
ゆるくつながっているので、たんなる「小説3つの詰め合わせ」
ではない。

それ以前に読んだ作品のイメージが再び喚起される
この手法は、いままでに出会ったことがなく、不思議な
体験だった。
そしてこの書き口が、私が金城一紀を好きになった
理由の一つだ。

『対話篇』の中で一番好きなのは、「花」という作品。
若い男が、老弁護士の頼みで東京から鹿児島まで
車で走破する。

作品そのものの温かさ、登場人物が醸し出すやわらかさが
何ともいえずいい。
それだけでなく、3作品中3番目に置かれているため、
<ゆるいつながり>が随所に見られ、より濃厚な作品に
なっている。


作品は違うが、心に残ったセリフがあるのでここにとどめておきたい。

「どうしてこんなに言葉が足りないんだろ。大切なことを伝えたい時には、いつも小学生の時より言葉が足りなくなるわ」

ー「恋愛小説」より引用。



『映画篇』には、映画によってゆるくつながった5つの作品が
収録されている。

こちらも、5作品中5つ目の「愛の泉」という作品がお気に入り。
おじいちゃんが亡くなり元気をなくしたおばあちゃんに、
思い出の映画を大スクリーンで見せてあげよう、と孫たちが
奮闘する。

驚くべきは、<ゆるいつながり>が小説の垣根を越えてそこかしこに
見つかることだ。
もしかすると、他の作品を読んだ後に改めて読み返すと、さらなる
発見ができるのかもしれない。


少し長いが、印象に残ったセリフがあるので、こちらも書き残しておきたい。


「君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすますことだ。そうすると、君はその人が自分の思っていたよりも単純ではないことに気づく。極端なことを言えば、君はその人のことを実は何も知っていなかったのを思い知る。そこに至って、普段は軽く受け流していた言動でも、きちんと意味を考えざるを得なくなる。この人の本当に言いたいことはなんだろう?この人はなんでこんな考え方をするんだろう?ってね。難しくても決して投げ出さずにそれらの答えを出し続ける限り、君は次々に新しい問いを発するその人から目が離せなくなっていって、前よりもどんどん好きになっていく。と同時に、君は多くのものを与えられている。たとえ、必死で出したすべての答えが間違っていたとしてもね」


―「愛の泉」より引用。

このことは「人を好きになる」という場面だけでなく、
「何かを知る」ということすべてにあてはまるのではないだろうか。

9/01/2010

8月に観た映画(映画館編)。

DVD編に引き続いて、映画館で観た映画を紹介します。

インセプションは面白いので特にオススメです。
しばらくすると公開終了になってしまうと思うので、
お早めにー!









シルビアのいる街で
http://www.eiganokuni.com/sylvia/index2.html


完全にやられた。
主人公は青年ではなく、街だった。
最初の長回しで、監督が展開を期待する観衆を
なだめているということに若干は気付いたが、
まさかここまでとは。。。

「いつもと同じ気分」で観に行くと、完全に肩透かしを食らう。

「自然な街の風景」をこれだけ長い時間、
「人工的に」作り出していたとしたら、
圧巻の技術である。

どこにフォーカスを当てるわけでもないところに、
その難しさがあると思う。
あと、この作品はセリフがかなり少ないのだが、
青年の目の演技がなかなかいい。











フローズン・リバー
http://www.astaire.co.jp/frozenriver/

「貧困」と「少数民族」というテーマの組み合わせ。
あまり見ない組み合わせで、新鮮だった。

「悪役」が存在しないところに、この映画の現実感を
引き立てる大きな要因があるのだろう。
みんな必死で、現実を生き抜こうともがいている。
そこに犯罪が忍び寄ってくる。

「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるが、
まさにこのイメージだろう。

もがくほど、その深みにはまっていく。











ハート・ロッカー(The Hurt Locker)
http://hurtlocker.jp/

映画館で観るとより活きる映画だと思う。

トラウマになるんじゃないかというくらい、「これでもか」
とリアリスティックな恐怖が襲ってくる。
それが終盤に活きている。

暗闇で兵士の荒い息使いだけが聞こえてくるシーン、
そしてスーパーの、棚いっぱいにならんだシリアルを
見て立ちつくすシーンなど、瞬間を捉えるのがうまい。

この映画がアメリカで作られたもの、ということを考えると
その「描き方」にいろいろと思いを巡らせてしまうのだが、
今のところはインパクトが先行して、その点を冷静に
判断しかねる。

その「描き方」にいくらか差し引いて考える点があるとしても、
いい映画だと言えるのではないだろうか。











インセプション
http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/

ざっくり言えば、「記憶」をテーマにした映画。
その点で「シャッター・アイランド」と切り口を
ずらした作品と捉える事ができるだろう。

さらに、シャッター・アイランドに続いてこの作品でも
DiCapprioが出演している。

こういう作品が好きなんだろうか?

twitterで結構評価が高かったので期待して観に
行ったが、期待を裏切らない出来の作品だった。

複雑に入り組んだ作品を、これだけ丁寧に
解きほぐして提示できる
Christopher Nolanは素晴らしい。

この夏観た映画の中で、間違いなくトップ3に入る映画である。











アメリ

http://www.albatros-film.com/movie/amelie/

Jean-Pierre Jeunetの代表作。
全編を通してふわふわした、独特の雰囲気がある映画だった。

さわやかな笑いあり、ブラックな笑いあり。
最後はすっきりまとまっていて、気楽に観れる。

パリ、また行きたいなぁー。










ロング・エンゲージメント

これまたJean-Pierre Jeunetの作品。

『アメリ』と同じ
Audrey Tautouが主演だが、打って変わって、
出征した夫の生存を信じて奮闘する妻の姿を描く。

戦場のシーンは、映画館で見るからこそ臨場感が
リアルに伝わってくる。

最後のシーンの妻の顔が何ともいえない、いい表情。
作品がこのシーンに集約されているように感じられた。

*おまけ*

Audrey Tautouのハリウッド1作目は、『ダ・ヴィンチ・コード』
のヒロイン役だったみたいです。
当時観ていたときは、全然気づきませんでした・・・。

8月に読んだ本。

8月に読んだ本を紹介します。

帰省、合宿など移動時間が多かったので、コマ切れ時間を使って
珍しく小説を何冊か読んだ。


プラチナデータプラチナデータ
東野 圭吾

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プラチナデータ
東野圭吾が好きな母親に勧められて読む。
以前『流星の絆』も読んで面白かったが、これもなかなか面白い。
まだまだ自分の推理が鈍いことに恥ずかしさを感じながらも、
話の筋の面白さ、意外さが楽しかった。
文庫本に比べて少し高いが、買う価値はある。オススメ。

なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか (学研新書)なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか (学研新書)
中井 俊已

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・なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか
ジェンダーから日本教育史を見つめ直す、という講義のレポートを
執筆する際に参考に読んだ。
この本では、男女別学によって生まれるメリットを多く紹介し、
男女別学の合理性を主張している。
脳科学によって検証されている男女の生得的な違いや、
PISAの結果から
見えてくる男女の科目ごとの得意・不得意などを根拠としながら論を
すすめている。

ただ、私はこの議論に違和感を感じる。
やはり「学歴」「学校ランク」の影響のほうが強くて、それを補完
するものとして「男女別学」の効果があるように思えるのである。

確かに「男女別学」の学校で偏差値の高い学校はあるが、それは
学校ランクが高いからこそ、それを目当てにして偏差値の高い生徒が
集まってくることで、さらに学校ランクが高まるのであって、
「男女別学」の効果を十分に理解して入学している生徒はほとんど
いないのではないだろうか。

もともと「出来のいい」生徒が入ってくるのであれば、男女別学の
効果で学力が上がったとは言い切れないのである。

この問題にクリアな解答を提示できない点で、全体の議論が説得力に
満ちているとは言い難い。より説得的な議論にするためには、統計的な
(学校ランクを統制したうえで男女別学、男女共学の効果をはかるなど)
実証的な研究が必要になるだろう。

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)
苅谷 剛彦

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・知的複眼思考法
教育社会学の大家、苅谷先生の本。
以前からいろんなところでこの本の存在は知っていたが、
やっと読む機会に巡り合えた。
得るところが多かったので、改めてじっくり紹介したいと思う。

東京島 (新潮文庫)東京島 (新潮文庫)
桐野 夏生

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・東京島
映画も公開されたので読んでみようか、と思い購入。
でも個人的にはあまり面白くなかった。
無人島、外界からの侵入者、島との同化、脱出の試みなどなど、
"LOST"のミニチュア版のような印象をぬぐい切れなかった
からだろう。
ちなみに、しばらくするとLOSTファイナルシーズンの
レンタルが始まるみたいですね。
自分はシーズン3で止まっているので、これを機会に(?)、
また見ちゃいそうです。


風の歌を聴け (講談社文庫)風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹

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・風の歌を聴け
初めて村上春樹を読んだ。
内容はなんてことはないのだが、物語のところどころで
言葉がきらきらと輝いているような印象を受けた。
こういう作品はあまり読んだことがなかったので新鮮な感じ。

「もし僕たちが年中しゃべり続け、それも真実しかしゃべらないとしたら、
真実の価値など失くなってしまうのかもしれない」


なかなか深くて、ちょっとシニカルで、このフレーズがお気に入りです。