11/30/2010

お別れする前に。(9~11月の読書日記)

今日で11月も終わり。
師走、バテずに最後まで走り切りたいものです。

さて、9月から11月まで、ほとんどまともに本の紹介をしてませんでした。
最近、本を買う欲求を我慢しきれなくなって、新たに10冊くらい
買ってしまったので(ネットの古本はホントに便利)、これを機にいったん
手持ちの本を整理しようと思っています。

・・・というわけで、私が3カ月で読んだ懐かしの(?)本を紹介します。


サッカーの見方は1日で変えられるサッカーの見方は1日で変えられる
木崎 伸也

東洋経済新報社 2010-04-29
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薄いが、中身は結構面白い。
特に印象的だったのは、
・良いチームは、後半40分でも全体をコンパクトに保てている
・良いMFは、ニアゾーンをうまく使う
サッカーは割と見るけど、どうも「うおー」とか「きゃー」とか言ってばっかりだな、
という人におすすめ。ちょっと違った見方ができるようになります。


絵画を読む―イコノロジー入門 (NHKブックス)絵画を読む―イコノロジー入門 (NHKブックス)
若桑 みどり

日本放送出版協会 1993-07
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西洋絵画によく見られる、モノによる「暗示」を理解しよう、という本。
(イコノロジーをこんな適当に表現していいのかわからないが、
大方はあってると思う)
これを一冊読めば、展覧会で絵と向き合う時に新たな見方が獲得できる。
いま改めて手にとってみて、売るのをやめました(笑)


働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)
中島 義道

新潮社 2004-04
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私の好きな哲学者、中島義道の著作。
「なぜ働くんだろう」ということを、就活コンサルではない人が
突き詰めるとこんな感じ、という本。
全く世間に媚びない感じがいい。これは本当におススメ。




反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
湯浅 誠

岩波書店 2008-04-22
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この本をきっかけに、貧困問題についての関心が高まった。
特に第3章(「貧困は自己責任なのか」)は興味深い。
立ち読みでもいいので、そこは読んでほしい。

私個人としては、貧困は自己責任ではないと考えている。



フランス映画史の誘惑 (集英社新書)フランス映画史の誘惑 (集英社新書)
中条 省平

集英社 2003-01-17
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筆者も述べているが、フランス映画史を現在まで貫くかたちで
書かれた数少ない本。

いわゆるアメリカ映画とは違う、フランス映画のなりたちがわかる本。

「フィルム・ノワール」や「ヌーヴェル・ヴァーグ」が思想と強く結びついて
いたことは新たな発見だった。
思想が重視されるからこそ、英語ではなくフランス語を用いるフランス
でそういった運動が花開いたのかもしれない。




パラレルワ-ルド・ラブスト-リ- (講談社文庫)パラレルワ-ルド・ラブスト-リ- (講談社文庫)
東野 圭吾

講談社 1998-03-13
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友人からの激しいプッシュに押されて購入。
分量は多めかもしれないが、すごく面白い。
記憶が食い違う2人がたどり着いた真実とは・・・。



ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
堤 未果

岩波書店 2008-01-22
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せっかくアメリカに行くんだから、と出発前に読む。

実際にアメリカに行ってみて、内容は割と真実ばかりだと思った。
落ちてたレシートを見たら、「フードスタンプ」で買った物だったり、
Holleywoodではダウンタウンから数百メートルのところに軍の
リクルートセンターがあったり(あきらかに観光に来た若者を
引きいれようということなのだろう)。
アメリカの負の部分を垣間見れる一冊。

ただ、「アメリカはそんなに悪いところじゃない」、というのが
旅を経ての総論的な感想です。


不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)
佐藤 俊樹

中央公論新社 2000-06
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社会学を専攻している人なら、一度は耳にしたことがある(はず)の
佐藤俊樹先生の一冊。
これも、少なくとも社会学をかじったことのある方には、強くお勧めします。

文中に出てくる、「以前存在していた、ブルーカラー上層という階層上昇
ルートが現在なくなりつつあり、階層を上昇させたければホワイトカラー
としてやっていく以外になくなった」という指摘は、非常に鋭い。

ただ、個人的には現在の「非営利団体設立、あるいは起業」という潮流は
「ブルーカラーにおける階層上昇」のオルタナティブとなりうると考えているので、
日本社会がより閉塞状態に進んでいくとは思っていない(というか、思いたくない)。
僕らの世代がなんとかしないといけない。


イスラームの日常世界 (岩波新書)イスラームの日常世界 (岩波新書)
片倉 もとこ

岩波書店 1991-01
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映画の題材としてイスラム社会が描かれることがあり、その
あり方に興味を持っていたため、試しに読んでみた。
「コーラン」という経典の(キリスト教の聖書からみた)特殊性に
驚いた。
チャンスがあれば、イスラム圏に行ってみたいなぁ。




世界級キャリアのつくり方―20代、30代からの“国際派”プロフェッショナルのすすめ世界級キャリアのつくり方―20代、30代からの“国際派”プロフェッショナルのすすめ
黒川 清 石倉 洋子

東洋経済新報社 2006-05
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現在のマイブームである、黒川清さんの著書。
「世界は広い、日本はスタンダードではない」ということ。

本当に留学したい。というか、すると決めた。
ただし、自分の中でよりしっかりとした理論武装が必要。



イノベーション思考法 (PHP新書)イノベーション思考法 (PHP新書)
黒川 清

PHP研究所 2008-03-15
売り上げランキング : 190823

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続けてもう一冊。理論武装のために。
「イノベーション」とはいかに起こるのか、誰が起こすのか。

この本をきっかけに、ただいま、フリードマン『フラットな世界』
を読んでいる最中。



The AlchemistThe Alchemist
Paulo Coelho

HarperCollins 2006-10
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言わずと知れた名作。
アメリカの古本屋さんで$7で購入し、帰りの飛行機で読む。
メッセージとしては、「ハングリー精神を忘れるな」あるいは
「チャレンジなくして自らの道を進むことはできない」という
感じだろう、と読めた。心にしみる。

英語力に自信がなくてもきっと読めるので、気分転換に洋書を、という人にもお勧め。

以上、長い記事を最後まで読んでくださりありがとうございました!

11/25/2010

『ガタカ』(Gattaca)

ガタカガタカ
アンドリュー・ニコル

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 1998-12-24
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tsutayaのピックアップに乗せられてみた。
最近、映画を見る(おもに精神的な)余裕がなかったので、
なんか「悪いことをした」解放感に包まれながら鑑賞。

ストーリーの説明は、wikipediaにお任せします。

出生前の遺伝子操作により、生まれながらに優れた知能と体力と外見を持った「適正者」と、「欠陥」のある遺伝子を持ちうる自然出産により産まれた「不適正者」との間で厳格な社会的差別がある近未来。

「不適正者」として産まれた主人公ビンセントは、子供の頃から「適正者」のみに資格が与えられている宇宙飛行士になる事を夢見ていた。ビンセントは DNAブローカーの仲介で、自殺未遂により足の自由を失った元水泳金メダル候補の「適正者」ジェローム・モローの生体ID(血液や指紋など)を買い取り、 生体偽装によりジェロームになりすまし、宇宙局「ガタカ」の局員となる。努力の結果ついにビンセントは念願のタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれるが・・・。

人間の成し得る限界は、生まれ持った遺伝子だけに左右されるのではなく「意志」により人生の道が開かれ、また「優秀な遺伝子」を持った人間であっても「運命」により人生が左右されることを描いたSFとサスペンスの要素を加えた人間ドラマ。

--wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%BF%E3%82%AB)


この映画の面白いところは、「遺伝子選別が進むと、こんな感じ?」という発想力にある。非常に内容、見る側に問いたいことが明快で、見ていて自然と入り込める。

ただし、個人的には「もうひとひねり」が欲しかった。

以前、『平等ゲーム』という作品を読んだときにも思ったことだが、せっかく斬新な「土台」を置いたにもかかわらず、そのうえで展開される議論がありきたりになってしまっていることがある。「議論」の部分に監督自らの思想を組み込めるかどうかが、その作品を名作にもするし、そうでないものにもするのだろう。もっと攻めてほしかった。

その点、やはりクリント・イーストウッドとケン・ローチはその「2段階の難しさ」を毎回クリアしてくる。すごい。

P.S.アメリカではAFI FEST(http://www.afi.com/afifest/)に参加して、ヒッチコックの「裏窓」を見ました!アメリカ人とみるとまた違った印象。英語だから感じ取ることができる「掛け合い」の面白さがあることに気付いた。ちなみにAFI FESTはすべて無料。日本でもこんな映画祭、やってくれないだろうか。来年も機会があれば行きたい。


11/14/2010

アメリカ一人旅を経て思うこと。












Seattleの夜景。


11月4日~11月12日まで、学校をさぼって(ホントすいません)
アメリカへ一人旅をしてきました。
自分のものの見方を広げる上で、価値のある旅でした。
後々旅のようすはアップしますが、今回はいま感じていることを
ひとつ紹介したいと思います。

「働き方」のスタンスについて。
アメリカでさまざまな店に入る中で考えたこととして、
「私としての個人」と「団体に属する個人」、どちらが
より前面に出てくるかということがある。
すなわち、お客さんに接する際に「私個人」を下敷き
として会話をするのか、それとも「団体のなかのひとり」
として、できるだけ団体として足並みをそろえていくのか
ということである。

日本では、「団体に属する個人」という側面が前面に出てくる。
たとえばファミレスで働くアルバイトの人たちは、マニュアルに
沿って、一定水準のサービスをすべてのお客さんに平等に提供
している。そのため、批判を恐れずに言えば、私は彼らをまるで
「ぬくもりをもった機械集団」のように感じることがある。

それに対してアメリカでは「私個人」という側面が前面に出てくる
ように感じた。たとえばショップの店員さん。
"Hello,how are you?"
で会話を始めるのがお決まりのパターンだ。それに応じて
"And you?"
と聞けば、たいてい
"Fine,thank you."
という紋切り型の答えが返ってくる。
「日本型」も「アメリカ型」も、どちらもある意味紋切り型の発話が
行われる点では大差ない。
ただし、ここで「日本型」と大きく違うのは"I"と"You"という「私個人」
の存在がクローズアップされることではないだろうか。
「組織で働いているが、働いているのはまさに『私個人』だ」という
意識が常に意識されるところに、「アメリカ型」の大きな特徴がある。

これはより抽象的にいえば、「ムラ意識の強い日本人」と「個の意識
が強いアメリカ人」というよく言われる二項対立のことを指すのだろう。

個人的には「日本型」の働き方は嫌いではない(もちろんこれは良い
面もある日本の「伝統」なのだから)が、「アメリカ型」をいろんなところに
ちりばめていくことが必要になってきているのではないかと感じる。

グローバリゼーションの真っただ中にある今、世界は日本だけで
できているのではないのだから。

10/13/2010

なんか面白そうかも。

今回は、たまたま見つけたイベントが面白そうなので、
ご紹介しようと思います。

10月16日に、東京大学駒場キャンパスで、人身売買をテーマに
描かれた映画が上映されるようです。
詳しくはリンク先へどうぞ。

「リリアフォーエバー/LILJA 4-EVER」 @東大駒場キャンパス

~人身取引を知っていますか? 人身売買問題と人間の安全保障~」

http://www.polarisproject.jp/news/42-news/861-627


上映される映画、”
LILJA 4-EVER”の監督はルーカス・ムーディソンという人物なのですが、
わりとすごい人みたいです。
以下、wikipediaより。

---
マルメで生まれる。23歳の時に詩集や小説を執筆・出版していた。
スウェーデン国立映画学校ドラマチスカ・インスティテュートで映画製作を学ぶ。短編の監督からキャリアをスタートさせた。 1998年に『ショー・ミー・ラヴ』で長編監督デビューを果たす。
同作品は多数の映画祭で上映され、一躍その名を知られるようになる。スウェーデンでは『タイタニック』を超える大ヒットとなった。
2009年にはガエル・ガルシア・ベルナルとミシェル・ウィリアムズ主演の『Mammoth』が公開。
私生活では1994年に漫画家のココ・ムーディソンと結婚し、3人の子供がいる。フェミニストでベジタリアン、敬けんなキリスト教徒でもある。(以上、引用おわり)
---


とのことです。

しかも、この作品は日本未公開なので、日本語字幕付きで見られるのは数少ない機会だと思います。
お時間の許す方がいらっしゃれば、ぜひ。


10/04/2010

これからの「正義」の話をしよう

早いものでもう10月ですね。
9月も何冊か本を読みましたが、それはまたの機会にご紹介します。

今回はいまちょっとしたブームになっている、Michael Sandelです。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍

早川書房 2010-05-22
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キャッチーな装丁とは裏腹(?)に、なかなか難解な本。

アリストテレス、カントなどの思想を出来る限り分かりやすく
説明しよう、という意欲に満ちた本だ。
ただ、私にとってはやはりさーっと流し読みできるレベルでは
ない。

本書では、「幸福の最大化」「自由の尊重」「美徳の涵養」という3つの
柱に沿って、さまざまな思想家の考えを解説している。出来る限り、現実に
起こった問題のなかで「正義とはなにか」という問いに応じようとしている
点も評価できる。

紹介された思想の中で、もっともしっくりきたのはロールズである。
特におもしろいと感じたのは、「格差原理」というものだ。
「格差原理」とは、「才の持ち主には、その才能を伸ばすよう促すとともに、
その才能が市場で生み出した報酬は共同体全体のものであることを理解して
もらう」というものだ。
この原理のもとでは、各人の努力さえも「偶然与えられた環境による」として、
称賛されることはない。

さらにロールズは、その人が社会的に成功するのは、そのときの社会の
「トレンド」をたまたま満たしたからだ、とする。

これらの指摘、ものの考え方は納得できると思う。
ただ、疑わしいのは「成功した人」が「自分が成功したのはたまたまだ」と、
どこまでも謙虚になれるのかということである。
いったん成功したら、その地位を維持・発展させようとして、「争い」に勝ち
つづけようとするのが資本主義の世の中では普通だろう。
その原動力は「もっと成功したい」あるいは「プライドを守りたい」といった、
自らの利益を拡大することをめざしたものになりがちなのではないか。
それはビジネスの世界しかり、受験界しかりである。

さらには「努力」を道徳的に評価されないとなると、さらに苦しい。
日々の営みに意味を見出しにくくなるからだ。
しんどくなったとき、たまには誰かに「よくがんばってるね」と
言ってもらいたくなるのが普通の人間なのではないか。

もうすこしロールズについて勉強してみたい。

9/21/2010

金城一紀。

またブログの更新が滞ってしまいました。
苦しい言い訳をさせていただくと、決してぐうたらしていて
ネタがなかったわけではありません。

どうも最近、言葉が上滑りしているというか、
本当に書きたい、伝えたいと思って真摯に
書けているのだろうかという疑問をぬぐえなかったので
ちょっと休憩させてもらっていました。

でもここ数日で、やっと真摯に言葉を紡げる自信が出てきたので、
改めて記事を書くことにしました。

・・・と、しょうもない言い訳はここらへんでおいといて。


今日は金城一紀著『対話篇』、『映画篇』を紹介します。


対話篇 (新潮文庫)対話篇 (新潮文庫)
金城 一紀

新潮社 2008-06-30
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映画篇 (集英社文庫)映画篇 (集英社文庫)
金城 一紀

集英社 2010-06-25
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まずは金城一紀についての簡単な紹介を、wikipediaより。
-------------------------------------------------------------------------------
金城 一紀(かねしろ かずき、1968年10月29日 - )は、日本の小説家、脚本家である。
大学1年の時、小説家を志すが執筆には早いと判断、大学卒業後の数年間まで膨大な数の作品を見て勉強した。
1998年、『レヴォリューションNO.3』で小説現代新人賞を受賞してデビュー。
2000年、自身の生い立ちが元の半自伝小説『GO』を出版、直木賞を受賞。翌年『GO』は映画化、国内の映画賞を総なめにした。

[著書]
* GO(2000年、講談社・文庫、角川文庫)映画・漫画化
* 対話篇(2003年、講談社・新潮文庫)映画化 (恋愛小説)
* 映画篇(2007年、集英社)2008年度本屋大賞第5位 漫画化

<ゾンビーズ・シリーズ>
* レヴォリューションNO.3(2001年、講談社・角川文庫)漫画化
* フライ,ダディ,フライ(2003年、講談社・角川文庫)映画化・漫画化
* SPEED(2005年、角川書店)漫画化

<シナリオ本>
* SP 警視庁警備部警護課第四係(2008年、扶桑社)
-----------------------------------------------------------------------------------
以上、wikipediaより引用。表記など一部改変。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%9F%8E%E4%B8%80%E7%B4%80)

私自身、金城一紀の作品の中にはかろうじて名前を
知っているものもあったが、実際に読んだことはなかった。
友人にすすめられて、初めて読んだ著書がこの2冊である。


『対話篇』は3つの中編小説が収録されている。
ただ、3つそれぞれが場所・象徴的なモノなどで
ゆるくつながっているので、たんなる「小説3つの詰め合わせ」
ではない。

それ以前に読んだ作品のイメージが再び喚起される
この手法は、いままでに出会ったことがなく、不思議な
体験だった。
そしてこの書き口が、私が金城一紀を好きになった
理由の一つだ。

『対話篇』の中で一番好きなのは、「花」という作品。
若い男が、老弁護士の頼みで東京から鹿児島まで
車で走破する。

作品そのものの温かさ、登場人物が醸し出すやわらかさが
何ともいえずいい。
それだけでなく、3作品中3番目に置かれているため、
<ゆるいつながり>が随所に見られ、より濃厚な作品に
なっている。


作品は違うが、心に残ったセリフがあるのでここにとどめておきたい。

「どうしてこんなに言葉が足りないんだろ。大切なことを伝えたい時には、いつも小学生の時より言葉が足りなくなるわ」

ー「恋愛小説」より引用。



『映画篇』には、映画によってゆるくつながった5つの作品が
収録されている。

こちらも、5作品中5つ目の「愛の泉」という作品がお気に入り。
おじいちゃんが亡くなり元気をなくしたおばあちゃんに、
思い出の映画を大スクリーンで見せてあげよう、と孫たちが
奮闘する。

驚くべきは、<ゆるいつながり>が小説の垣根を越えてそこかしこに
見つかることだ。
もしかすると、他の作品を読んだ後に改めて読み返すと、さらなる
発見ができるのかもしれない。


少し長いが、印象に残ったセリフがあるので、こちらも書き残しておきたい。


「君が人を好きになった時に取るべき最善の方法は、その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすますことだ。そうすると、君はその人が自分の思っていたよりも単純ではないことに気づく。極端なことを言えば、君はその人のことを実は何も知っていなかったのを思い知る。そこに至って、普段は軽く受け流していた言動でも、きちんと意味を考えざるを得なくなる。この人の本当に言いたいことはなんだろう?この人はなんでこんな考え方をするんだろう?ってね。難しくても決して投げ出さずにそれらの答えを出し続ける限り、君は次々に新しい問いを発するその人から目が離せなくなっていって、前よりもどんどん好きになっていく。と同時に、君は多くのものを与えられている。たとえ、必死で出したすべての答えが間違っていたとしてもね」


―「愛の泉」より引用。

このことは「人を好きになる」という場面だけでなく、
「何かを知る」ということすべてにあてはまるのではないだろうか。

9/01/2010

8月に観た映画(映画館編)。

DVD編に引き続いて、映画館で観た映画を紹介します。

インセプションは面白いので特にオススメです。
しばらくすると公開終了になってしまうと思うので、
お早めにー!









シルビアのいる街で
http://www.eiganokuni.com/sylvia/index2.html


完全にやられた。
主人公は青年ではなく、街だった。
最初の長回しで、監督が展開を期待する観衆を
なだめているということに若干は気付いたが、
まさかここまでとは。。。

「いつもと同じ気分」で観に行くと、完全に肩透かしを食らう。

「自然な街の風景」をこれだけ長い時間、
「人工的に」作り出していたとしたら、
圧巻の技術である。

どこにフォーカスを当てるわけでもないところに、
その難しさがあると思う。
あと、この作品はセリフがかなり少ないのだが、
青年の目の演技がなかなかいい。











フローズン・リバー
http://www.astaire.co.jp/frozenriver/

「貧困」と「少数民族」というテーマの組み合わせ。
あまり見ない組み合わせで、新鮮だった。

「悪役」が存在しないところに、この映画の現実感を
引き立てる大きな要因があるのだろう。
みんな必死で、現実を生き抜こうともがいている。
そこに犯罪が忍び寄ってくる。

「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるが、
まさにこのイメージだろう。

もがくほど、その深みにはまっていく。











ハート・ロッカー(The Hurt Locker)
http://hurtlocker.jp/

映画館で観るとより活きる映画だと思う。

トラウマになるんじゃないかというくらい、「これでもか」
とリアリスティックな恐怖が襲ってくる。
それが終盤に活きている。

暗闇で兵士の荒い息使いだけが聞こえてくるシーン、
そしてスーパーの、棚いっぱいにならんだシリアルを
見て立ちつくすシーンなど、瞬間を捉えるのがうまい。

この映画がアメリカで作られたもの、ということを考えると
その「描き方」にいろいろと思いを巡らせてしまうのだが、
今のところはインパクトが先行して、その点を冷静に
判断しかねる。

その「描き方」にいくらか差し引いて考える点があるとしても、
いい映画だと言えるのではないだろうか。











インセプション
http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/

ざっくり言えば、「記憶」をテーマにした映画。
その点で「シャッター・アイランド」と切り口を
ずらした作品と捉える事ができるだろう。

さらに、シャッター・アイランドに続いてこの作品でも
DiCapprioが出演している。

こういう作品が好きなんだろうか?

twitterで結構評価が高かったので期待して観に
行ったが、期待を裏切らない出来の作品だった。

複雑に入り組んだ作品を、これだけ丁寧に
解きほぐして提示できる
Christopher Nolanは素晴らしい。

この夏観た映画の中で、間違いなくトップ3に入る映画である。











アメリ

http://www.albatros-film.com/movie/amelie/

Jean-Pierre Jeunetの代表作。
全編を通してふわふわした、独特の雰囲気がある映画だった。

さわやかな笑いあり、ブラックな笑いあり。
最後はすっきりまとまっていて、気楽に観れる。

パリ、また行きたいなぁー。










ロング・エンゲージメント

これまたJean-Pierre Jeunetの作品。

『アメリ』と同じ
Audrey Tautouが主演だが、打って変わって、
出征した夫の生存を信じて奮闘する妻の姿を描く。

戦場のシーンは、映画館で見るからこそ臨場感が
リアルに伝わってくる。

最後のシーンの妻の顔が何ともいえない、いい表情。
作品がこのシーンに集約されているように感じられた。

*おまけ*

Audrey Tautouのハリウッド1作目は、『ダ・ヴィンチ・コード』
のヒロイン役だったみたいです。
当時観ていたときは、全然気づきませんでした・・・。