7/27/2010

日本の難点

日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)
宮台 真司

幻冬舎 2009-04
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今日は宮台真司『日本の難点』を紹介します。
宮台真司は、私が最近注目している学者です。

論文においてはこれまで、「島宇宙化」など
現状を把握する絶妙な言葉を生みだしており、
literacyの高い人だなと尊敬しています。

この本は、とにかく中身が盛りだくさん。
本を読んでいると時たま見られる、「間延び」
のようなものが全くない。
だから、読み切るのにすごく疲れる本でもある。

取り上げる領域は多岐にわたっているが、
ここで注目したいのはやはり教育について
取り上げた2章である。
2章の終盤で、「早期教育」について触れられて
いる部分がある。

著者は、プラトンのいう「ミメーシス(感情的摸倣)」を周囲に
もたらす人間の存在が重要であるという。
すなわち、「なんだかわからないけど、この人すごい!」
と周囲が思わず感じてしまうような人である。
さらに、「ミメーシス」を引き起こす人間の必要条件として
「ありそうもない衝動」「不思議な動機づけ」に突き動かされて
いることが挙げられるという。
翻って早期教育を行う親は、この「ミメーシス」を引き起こすような
「ありそうもない衝動」「不思議な動機づけ」によって動くのではなく、
「打算的に」動いているパターンが多いのではないかと指摘する。

これは個人的な経験から言うと
、「当たらずといえども遠からず」
というところである。
昔友人の紹介で、「お受験」関係の模試バイトをさせてもらったが、
親の様子はきれいに2タイプに分類できた。

親子面接の後で、(その出来に関わらず)
①両親だけで問題点を洗い出し会話をしており、子どもはそのあとをついてくるという例。
②帰るときにも3人横並びで(手をつないだりして)、なにか楽しげに帰っていく例。

①はまさに筆者のいう「打算的な」パターンだろう。
しかし②の例は早期教育という「ツール」に足を突っ込んではいるものの、
「ミメーシス」を与える存在でありうると思う。

「やはり「主体性」が大事だ」、という誰も救われない文言で締めることに
なってしまいそうである。
まったくもって力不足だ。

所感を述べるだけで何の方向付けも、収束もしていませんが
本を読み直してふと思ったことを、つらつらと書かせてもらいました。

7/26/2010

絶対貧困

絶対貧困絶対貧困
石井光太

光文社 2009-03-24
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今日は「絶対貧困」を紹介します。

この本の特徴は、「当事者視点」で書かれているところ。
筆者が実際にスラムで暮らすなどした経験をもとに書かれて
いるので、ニュートラルな視点から書かれている印象が強い。

スラム暮らしの人々がもつ「連帯感」、婚姻について、など
語られることの少ない着目点もあり、新鮮に感じられた。

一方で、人身売買や売春・物乞いなどについても詳しく書かれて
おり、厳しい現状を理解するきっかけにもなった。


この本を読んでいて強く思い出されたのが、3月に友人と
旅行したタイでの出来事である。

都市部の路上では、マクドナルドの紙コップなどを自分の前に
おいて、じっと座って手を合わせている人たちを多く見受けた。
中には、子どもをかかえたお母さん、さらには5,6歳に見える
子どもがひとり座っていることもあった。

「果たして、この人たちに募金してあげることは本人たちにとって
よいことなのだろうか」
「今募金をしてしまっては、物乞いをずっと続けてしまうのではないか」

こんなことを考え、私は募金をしなかった。
確かにこの考えにも一理ある、と筆者も書いている。

ただし、筆者が強調しているのは
「明日、一週間後、彼ら・彼女らが生きているとは限らない」
ということだ。
貧困は構造的な問題であり、ちょっとした募金で何も状況が
好転しないことは分かっている。
でも、そこにいる人たちは、構造の転換をプライオリティに願っている
のではない。
「自分が少しでも長く生き延びること」を願っているのである。


「少量の金額の授与に、あまりに大きな理想を詰め込まなくてもいいのではないか」
というコメントには、考えさせられました。

以後同じ状況に出会ったとき、果たして自分はどう振る舞えばいいのか。
まだわかりません。

7/25/2010

印象派とカンヌ(その2)。













「パリ20区、僕たちのクラス」
http://class.eiga.com/

今日はよくばってもうひとつ。
岩波ホール@神保町へ行ってきました。
こちらも前から観たいと思っていた映画です。

率直に言って、素晴らしい映画だと思います。
スタッフロールに入った瞬間、感動でゾクゾクしました。
以前、映画館で「縞模様のパジャマの少年」を
観た時に匹敵する衝撃でした。
(全然中身の違う話なんですが・・・なんでだろう。)

ちなみに、「縞模様のパジャマの少年」も素晴らしい作品です。
ご覧になってない方はぜひ!

以前にこのブログで、「告白」のブックレビューを
した際に、「学級」についてコメントさせてもらいましたが、
そのあり方についてさらに深く考えさせられる映画でした。

最後に生徒の女の子が、プラトンの「国家」を読んで
その内容を紹介するという場面があるのですが、
そのなかで

「お前は自分のことが正しいと証明できるか?」

というコメントが出てきます。(確かそんなコメントでした)

これが「学級」の根幹をなす言葉のひとつなのではないでしょうか。

生徒は「学級」という閉鎖的な空間に放り込まれ、そのなかで
長い間生活し、いろいろな体験をしていきます。
教師は、「常に正しい模範」であることが要請されるものの、
内心では人間だからこそ、「自分は模範的な大それた人間じゃない」
という気持ちと葛藤しながら、子どもたちと真摯に向き合います。

生徒はもちろん、教師も常に心を揺さぶられ、相互作用によって
成長していくのだと思います。

「正しさを証明できない、でも自分の存在を善なるものとして証明したい、認められたい」
そんな葛藤が渦巻いているのが「教室」なのではないでしょうか。

この映画ではすっきりとした解決は何も提示されません。
でもその割り切れなさいっぱいの状況が、現実くささを引き立てるのでは
ないでしょうか。


日々の生活においても、大半はそうであるはずです。

印象派とカンヌ(その1)。
















「印象派はお好きですか?」
ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/


前々から行こうと思ってたけど、なかなか行けなかった
展覧会へ行ってきました。
最終日がたまたま暇な休日でホントにラッキーでした!


では、いくつか気になった絵を紹介します。
















・ジャン=フランソワ・ミレー 「乳しぼりの女」
ミレーは好きな画家の一人です。
が、いかんせん知識が乏しい。本当にお恥ずかしい限りです。
夏の間にミレー関係の文献を読んで、詳しくなりたいですねー。



・黒田清輝 「杣」
画像が見つかりませんでした。残念。
これで「そま」と読みます。
wikipediaによれば、
(きこり、木樵)とは、森林樹木などにより伐採すること、もしくはそれによって生計を立てている者を指す。樵夫(しょうふ)や杣夫(そまふ)ともいう。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%B5)
だそうです。
思い出してみれば、確かにみのがさを被った男の人がひとり、
ひっそりと描かれていました。
紅葉の描き方が好きでした。
これまであまり日本人画家に着目してきませんでしたが、
いいきっかけになりました。

















・岡田三郎助 「婦人像」
「着物を着た女性」の油絵、初めて観ました。
日本画と違う、油彩らしい独特の雰囲気があって
印象に残りました。

7/23/2010

6月・7月で読んだ本

家にだんだんと読んだ本がたまってきたので、
まとめて簡単にレビューします。
ただ、この間に30冊以上本を購入したため(!)
家が本であふれてます。
夏は本にまみれて、のんびり過ごせたらいいなぁ・・・。


平等ゲーム平等ゲーム
桂 望実

幻冬舎 2008-08
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・桂 望実、2008、『平等ゲーム』 幻冬舎
「完全な機会平等」の世界で生きている人間が
現代日本の生活に接触したらどうなるか?
を描いた小説。
設定は面白いが、核心に迫りきらずにすっきりと
終わってしまうので個人的にはいまいち。
 
日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)
宮台 真司

幻冬舎 2009-04
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・宮台真司、2009、『日本の難点』 幻冬舎新書
宮台真司の本を読んでみたいと思い、とりあえず買った本。
とにかく中身が濃い。他にも著書を読んでみたい。
この本に関しては改めてレビューします。

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
谷岡 一郎

文藝春秋 2000-06
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・谷岡一郎、2000、『社会調査のウソ』 文春文庫
学科で社会調査実習を行うため、助教から勧められた本。
切り口は鋭く、まぁ読む価値はある。勉強中の身としてはためになった。


絶対貧困絶対貧困
石井光太

光文社 2009-03-24
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・石井光太、2009、『絶対貧困』 光文社
amazon.jpのトップページに一時期載っていたので興味を持った本。
これも結構面白い。改めてレビューします。


東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?
新保 信長

アスペクト 2006-07
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・新保信長、2006、『東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?』 アスペクト
題名に惹かれて購入。
東大生や東大OBのインタビューをもとに構成されている。
気軽な読み物としてはまぁまぁ。

アメリカの宗教右派 (中公新書ラクレ)アメリカの宗教右派 (中公新書ラクレ)
飯山 雅史

中央公論新社 2008-09
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・飯山政史、2008、『アメリカの宗教右派』 中公新書ラクレ 
宗教学の講義の補助文献として購入。
アメリカにおけるキリスト教勢力の教派はかなり複雑で、
かつ日々変化している。
その「混沌」をうまく切り分けて解説している本。
日本人にとって、宗教は疎遠なテーマに思えるかもしれないが、
グローバル化がしきりに叫ばれる世の中だから、これくらいは常識として
知っておいたほうが見聞を広げていくうえでもいいのでは。

7/15/2010

あの夏の子供たち












http://www.anonatsu.jp/index.html



恵比寿ガーデンシネマでの公開が16日まで、ということで
授業をさぼって行ってきました。

父親Grégoire
役の、ルイ=ドー・ド・ランクザン
の演技が光る。
物語を展開させる重要な役割をしっかり果たしている。

家族に起こった「ある出来事」を機に、物語は大きく展開するのですが、
そこかしこに思想的な深いコメントが入るあたりが、フランス映画だなー
という感じ。この深さがいい、と個人的には思う。

現実に十分起こりうる不幸な出来事を、
「どんな時でも、希望がないとはいえない」
という肯定気味の姿勢で捉えるあたりが
この映画のみずみずしさ、温かさを作り出して
いるように思える。

子役2人の演技もかわいらしく、映画全体の
優しい雰囲気作りに貢献している。

刺激を求めるというよりは、ほっこりしたいときにみるといい映画かも。

7/14/2010

珍しく、アニメ。











今日、「トイ・ストーリー3」を鑑賞。
生まれて初めての3Dで、ワクワク。

ウッディの声がトム・ハンクスなんですが、
吹き替えのため、唐沢寿明に。
まぁ唐沢さんに文句があるわけじゃないけど(実際よかった)、
個人的にトム・ハンクスが好きなのでちょっと残念。

映画そのものはと言えば、
ストーリーそのものは王道を行くような手堅いものだが、
いろんなところに遊び心がちりばめられている。
十分満足。

ただ、これを3Dにしなくてもよかったのでは。
newsweek日本版でも議論になっていたが、
全くその通りだと再認識せざるを得ない。

newsweek日本版 
「3D騒ぎが映画をダメにする9つの理由」(2010年6月18日)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100618-00000302-newsweek-int

少し主張が強硬な気はしますが、是非読んでみてください。

繰り返しますが、映画そのものは劇場で見る価値がありますよー。

7/12/2010

W杯終了&ブログ再開!

たいへんご無沙汰していましたが、
今日からまたつらつらと書いていこうかなと
思っています。

今日は朝3時に起き、友人のTくんとスポーツバーへ。
決勝、満喫できました!

6月から数えて、20試合以上観戦しました。
よくもまぁ、こんなにたくさん見たもんだ、と自分でも驚き。
改めて、「サッカーっていいなー」と思える、いい機会でした。
これを機に、数冊サッカー関連の本を乱読するつもりなので、
そのうちご紹介したいと思います。

あー、やっぱり南アフリカ行けばよかったかな・・・。