学歴社会の法則 教育を経済学から見直す (光文社新書) 光文社 2007-12-13 売り上げランキング : 132273 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
以前から気になっていた本だったが、やっと買う気になった。
まえがきに、「教育は多大な物的資源、教師・職員のサービス、
そして生徒・学生の時間と努力を必要とする経済活動である。」
とある。
経済的なアプローチに限らず、教育は学問横断的なテーマである。
世間で広まり、独り歩きしている感さえある「教育論」とは異なる
見方を提示してくれたという意味で、読んだ価値はあったと思う。
筆者は、これまで教育に関する経済学的な議論がうまく活用
されてこなかったのは、経済学が「市場の完全性」を前提として
いるためだ、と指摘している。
私自身、経済学的な思考を興味深いものだと感じながらも、
胡散臭さを感じている。
経済は「完全競争市場」という現実には存在しない市場を前提
として理論構築を進めているからだ。
(このことについてもさまざまな議論があるが、ここでは議論を避けたい。)
その点を配慮してきちんと説明してくれている点で、筆者に
共感できる部分が大きい。
この本の主張で好意的にとらえることができるのは、「現場任せに
しない」解決策を提示していることである。
経済学的な思考を用いて、「ペイできるのであれば、政府はどんどん
投資すべきだ」という論を展開する。
ややもすれば教育は、「現場の頑張りが足りない、もっとがんばれば
よくなるはずだ」という安易な押し付け論に陥りやすい。
(「教師の一層の努力が求められる」、「生徒の意識改革が必要だ」、等々。)
確かに現場の改善努力が一番大切なのだが、それでは済まないので
様々な問題が噴出しているのではないだろうか。
その観点から考えると、行政的な側面からもアプローチしている
のは評価できる。
一つ残念なのは、第7章「教師と学級規模の経済学」の内容が、
「学級規模」の問題に偏りすぎて、教師と生徒間の問題について
ほとんど触れられていない点だ。
個人的に最も興味を持っている領域なので、類似した本があれば
ぜひ読んでみたい。
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