10/04/2010

これからの「正義」の話をしよう

早いものでもう10月ですね。
9月も何冊か本を読みましたが、それはまたの機会にご紹介します。

今回はいまちょっとしたブームになっている、Michael Sandelです。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍

早川書房 2010-05-22
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キャッチーな装丁とは裏腹(?)に、なかなか難解な本。

アリストテレス、カントなどの思想を出来る限り分かりやすく
説明しよう、という意欲に満ちた本だ。
ただ、私にとってはやはりさーっと流し読みできるレベルでは
ない。

本書では、「幸福の最大化」「自由の尊重」「美徳の涵養」という3つの
柱に沿って、さまざまな思想家の考えを解説している。出来る限り、現実に
起こった問題のなかで「正義とはなにか」という問いに応じようとしている
点も評価できる。

紹介された思想の中で、もっともしっくりきたのはロールズである。
特におもしろいと感じたのは、「格差原理」というものだ。
「格差原理」とは、「才の持ち主には、その才能を伸ばすよう促すとともに、
その才能が市場で生み出した報酬は共同体全体のものであることを理解して
もらう」というものだ。
この原理のもとでは、各人の努力さえも「偶然与えられた環境による」として、
称賛されることはない。

さらにロールズは、その人が社会的に成功するのは、そのときの社会の
「トレンド」をたまたま満たしたからだ、とする。

これらの指摘、ものの考え方は納得できると思う。
ただ、疑わしいのは「成功した人」が「自分が成功したのはたまたまだ」と、
どこまでも謙虚になれるのかということである。
いったん成功したら、その地位を維持・発展させようとして、「争い」に勝ち
つづけようとするのが資本主義の世の中では普通だろう。
その原動力は「もっと成功したい」あるいは「プライドを守りたい」といった、
自らの利益を拡大することをめざしたものになりがちなのではないか。
それはビジネスの世界しかり、受験界しかりである。

さらには「努力」を道徳的に評価されないとなると、さらに苦しい。
日々の営みに意味を見出しにくくなるからだ。
しんどくなったとき、たまには誰かに「よくがんばってるね」と
言ってもらいたくなるのが普通の人間なのではないか。

もうすこしロールズについて勉強してみたい。

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